増加し続けるデータ

昨今では、情報の重要性が増し、世の中ではCDO(Chief Data Officer) という名称のエグゼクティブの役割が議論されるようになりました。AI が世の中の脚光を浴びるようになり、大量のデータをいかに価値に転換できるかが、経営判断を左右するような重要性を持つようになってきたためです。
以前は、経営者の勘と経験によってなされてきた意思決定が、実際に計測されたデータに基づいているのかについて焦点が当たるようになり、データに対する光の当て方の良否が、企業戦略の品質に直接かかわる時代となってきています。
一方、個人情報保護やコンプライアンスの観点から、データを取り扱う際の慎重さが一層求められるようになってきました。そして、このことはデータの管理コストを押し上げる要因にもなっています。

かつてデータと言えば、多くは数値のデータが主で、データそのものはそれほど大きくもありませんでした。ところが、昨今ではデータを生成するデバイスはセンサーやカメラなどと多様化し、その技術革新によって保存すべきデータの容量は特段に増加しています。
例えば、スマートフォンのデータは、カメラが精細化し、さらに静止画から動画へと拡張されるようになり、オブジェクトとしてのデータが大きくなってきています。また、ひと昔前にはコンピュータに画像のファイルを収めて加工するような作業は専門的な技術者の領域でしたが、今となっては誰でも画像編集などの作業ができるようにソフトウエア環境も充足しています。

今では、中学生でもコンピュータ上で画像を扱う時代となっています。つまりデータ量を計算する上では、1つのデータ生成プロセスが生むデータのバイトレングスが大きくなり、さらにデータを生成する人数の絶対数も増えているのです。
当然、発生する総データ量は、これらの積に比例した形で増えていきますので、世界の総データ量の推移は、2020 年から2025 年への5 年間で約3 倍となり、バイト数としては約180 ゼタバイト(注) 以上まで増加すると言われています。

注:1 ゼタバイト =1,000,000 ペタバイト

なぜ今磁気テープ技術なのか?

AI を中心として多くのデータが、以前よりも多彩多様な形で活用されるようになってきました。これによって、データが将来持ちうる価値を判断することが困難となり、従来は廃棄されていたようなデータでも、容易に廃棄することができなくなってきています。CDO は、データの生成から廃棄までの責任やプロセスを定義し、データ駆動型の企業経営を支援すると共に、データの漏洩や喪失によるビジネスリスクの回避手段についても検討しています。
小容量のデータをコンピュータシステムの上で保存管理することは、それほど難しくはありません。データ消失を避けるためにバックアップを何重にも取得する運用を行ったとしても、運用の煩雑さを除けば大したコストの増加とはならないでしょう。しかし、この容量が大きくなるとそう簡単には行きません。大容量のデータは、コストについて意識しながら効率的に保存しなければならず、特殊な技術が必要となります。
これは、磁気テープメディアをどう活用するかにかかっています。大量のデータの大部分は、ほとんどアクセスされることがなく、かといって将来の検証や再利用などの目的によって廃棄することができません。

このようなデータは、いかにコストを安く保存するかが重要となり、テープソリューションは、まさに活用すべきソリューションとなります。テープソリューションでは、ドライブとメディアが分かれており、テープドライブ(データアクセス)には保守料金がかかりますが、テープメディア(データ保存)は多くの場合保守料金がかからず、さらに電力も消費しません。大量のアクセスされないデータを長期間保持していても、コストが最適化され、さらに環境にも優しいと言うことができます。
記憶メディア( 媒体) は、バイト単価、つまり1 バイトのデータを保存するのにかかるコスト、アクセスの性能、メディアの信頼性、メディアの寿命、などで比較されます。

SSD(Solid State Disk) が世の中に出現して、SSD が良いのかHDD が良いのかという議論がされますが、SSD は高コストですが圧倒的にランダムアクセス性能に優れており、HDD はランダムアクセス性能ではSSD に劣りますがニアラインストレージとして価値がある、というコンテクストで説明されます。
天気予報や気象のデータ、加速器、衛星、ゲノムシーケンサーといった装置が生成するデータ、スーパーコンピュータがシミュレーションの結果として生み出すデータなど、これらのデータは歴史的に大容量であり、各界によって磁気テープメディアが効率的に活用されています。

クラウドサービスとデータ保存コスト

クラウドサービスは簡単にシステム化できて、コストが安い。利用者は、変化の激しい事業環境でできるだけすばやくシステムを立ち上げることができ、また廃棄できるようなプラットフォームを求めています。
確かにサービスの開発や立ち上げにおいて、クラウドサービスは最適なプラットフォームと言えるでしょう。

しかし、増え続ける大量のデータを保存するプラットフォームとして果たしてクラウドは最適でしょうか?インターネットの様々なエリアからアクセスされるようなデータの置き場所としては、クラウドは最適と言えます。
しかし、それは「保存する対象のデータ量が小さければ」という条件付きです。もしも大量のデータをクラウドに保存するとしたら、保存領域の課金は莫大なものとなるでしょう。クラウドは基本的にシェアリングモデルなので、サーバは単位時間によって課金され、使わない時は課金されずに済みますが、データは保存している限りはストレージスペースを保持しなければならず、データを消去しない限り永遠に課金され続けます。

また、一度クラウドに大量のデータを保存してしまったら、新たな場所に引っ越すことも容易ではありません。
これは、クラウドに限らずですが、大容量のストレージスペースを担保する際の基盤技術については、十分な検討が必須となると言えるでしょう。

IBMテープ・ライブラリーのご紹介

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豊富なラインナップを取り揃えております。

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高密度スロット技術を採用したことで、
最大連結フレーム数18、最大搭載ドライブ数128と大容量データ保存を実現。

ハイデンシティー・フレーム

  • 基本フレーム、拡張フレームで高密度(HD)スロット技術を採用
  • 最大連結フレーム数:18 LTO
  • LTO/TS11xx 混在構成可能

大容量データの格納(最大収納容量)

  • LTO:23,170巻 LTO-9(20TB/巻、非圧縮)417PB
  • エンタープライズ:17,550巻 3592JF(50TB/巻、非圧縮)877PB

搭載ドライブ

  • 最大搭載ドライブ数:128
  • TS1170/TS1160
  • LTO-9/LTO-8/LTO-7/LTO-6

研究所様提案事例

AITと株式会社イプリザの協業

株式会社AIT は、IBM 社のハードウエア、ソフトウエア製品を中心に、大規模システムの基盤関係の設計、構築、運用の観点でお客様を支援できるような豊富な人材を有し、研究開発分野、医療分野など多くの市場において導入実績を作っています。
一方、株式会社イプリザは、新しい会社ではありますが、大容量ストレージシステムやHPC(High Performance Computing) 領域におけるソフトウエア技術など、科学技術計算分野に関する深い知見と経験を有するメンバーを擁し、日々研鑽を重ねています。
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