人工知能【AI】導入事例

導入事例:活動レポート(2019年3月~2021年9月) -神奈川県立がんセンター 遺伝診療科様

~活動レポート(2019年3月~2021年9月)~

最終更新日:2025年11月19日

神奈川県立がんセンター遺伝診療科では、AITと共同で、現在AIチャットボットシステムを開発中です。 2020年11月~2021年3月の臨床試験を経て、現在は改善プロセスを実施しています。引き続き臨床応用を経て、実用化を目指しています。

1. 活動トピック

1-1. 臨床試験を実施

2020年11月よりおよそ5カ月間、神奈川県立がんセンター遺伝診療科では、AITと共同でAIチャットボットシステムを使った臨床試験を実施しました。臨床試験は事前に御賛同いただいた計11名の患者様を対象に実施され、その有用性や実用性を検証しました。臨床試験では、このAIチャットボットの仕組みが有効と考えられる結果を得られるとともに、実用化を踏まえ、いくつかの課題を明確にすることもできました。

「今後は臨床応用を目指します。そのためには研究対象者の数を増やし、また参加施設も拡げていきたいと考えています。」とは、認定遺伝カウンセラー®[1]の佐藤杏さん。

今後もより一層の研究を積み重ね、課題を積み上げ、改善していくことで実用化を目指すとのこと。

また、本研究代表者で医師の成松宏人先生がおっしゃるところでは、「AIチャットボットの開発自体にとどまらず、診療⾏為の中でどのようにこのシステムを組み込んでいくか。そういった仕組み作りの観点からも今後は検討していく必要性を感じています。」とのことで、今後はその仕組みづくりにも取り組んでいくそう。

さらなるAIチャットボットの使い勝手の向上、ひいては患者の皆様に寄り添った仕組みづくりが期待されます。

[1]: 認定遺伝カウンセラー®は日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会が共同認定している専門職資格で、2019年1月18日付にて商標登録されました。

1-2. 特許を出願

神奈川県立がんセンター遺伝診療科は、AITと共同で、臨床試験に並行し、AIチャットボットシステムを特許出願しました(「特願2021-64706」)。

今回の知財化の目的について成松先生曰く、「オリジナリティの高い技術のため、出願を決めました。また、今後の普及をにらみ、知財化しておくこととしました。」とのこと。知財化によって、今後の研究の進展や実用化に向け、より一層の蓋然性が高まることを期待します。

1-3. 最優秀演題賞を受賞

認定遺伝カウンセラー®の佐藤杏さんが、第27回日本遺伝性腫瘍学会学術集会にて最優秀演題賞を受賞しました。

演題発表では、①システム開発、②実現可能性の検証、③実装研究を紹介し、そこで明らかになった利点や課題を踏まえ、今後の展望までまとめられています。「受賞の連絡を聞いたとき
は、率直に⾔って⼤変驚きました。」とは受賞の佐藤さん。

この受賞の意義のひとつとして、「AIを使った演題の発表はこれまであまりされておらず、たくさんの方にとって刺激的だったのではないでしょうか。」と認定遺伝カウンセラー®の⽻⽥恵梨さんもおっしゃるとおり、遺伝性腫瘍に対してAIがどのような価値を提供できるのか、この受賞でひとつの形を示したと言えるかもしれません。

2. 認定遺伝カウンセラー®のお仕事

認定遺伝カウンセラー®さんの日々のお仕事ついてご紹介したいと思います。本件取組に参画する認定遺伝カウンセラー®の羽田恵梨さん、佐藤杏さんは、神奈川県立がんセンター遺伝診療科に在籍されています。同科認定遺伝カウンセラー®は、遺伝性疾患に関する遺伝カウンセリングや診断後のフォローなどを、臨床遺伝専門医やその他各科専門医の皆さんと日々連携して、その仕事に従事しています。また、遺伝学的検査結果の解釈や、日々の勉強会を開催するなども、その大切な業務の一つで、お二人は遺伝性腫瘍全般をその対象として、日々お忙しい毎日を送られています。

その専門性の高さ、守備範囲の広さ、何より患者様の病気に向き合う毎日に、気持ちが滅入ることなどないのでしょうか。

「患者さんは、いろいろ悩んで、決断されます。自分らしい決断をされた患者さんが、明るい表情で外来に来られるのをみると、嬉しい気持ちになります。」とは、羽田さん。「たくさんの方の人生に関わらせていただくことに、大変意義深さを感じます。」とお答えいただいたその姿勢は、大変誠実にそして真剣に感じました。患者様お一人お一人のお気持ちにしっかりと寄り添っていただける方々がいることが、難しい選択を迫られる患者様にとってどれだけ心強いか、改めて思い知らされた気がしました。

3. 今後の展望

神奈川県立がんセンター遺伝診療科では、AITと共同で、臨床試験で明らかになった課題を改善し、利便性を高め、臨床応用を目指します。また、AIチャットボットの開発のみにとどまらず、どのように診療に組み込むべきか、その仕組みづくりを併せて考えていきます。そしてこれらを十分に検討し、シミュレーションし、さらなる課題を見つけ出し改善することで、より効果的なシステム作りに繋げます。この取組みの進展によって、遺伝性腫瘍がより一層効率的、効果的に発見できるようになることを、そしてひとりでも多くの患者様に寄り添うことのできるシステムづくりとなることを、期待したいと思います。

(2021年9月.オンラインにて取材)
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