インフラ導入事例

インフラ導入事例:第⼀フロンティア⽣命保険株式会社様

高い可用性とコストパフォーマンスを重視

基幹システムのITインフラ変革で「IBM Power」と「IBM Storage FlashSystem」を選択
インフラ導入事例:第一フロンティア生命保険株式会社 様

最終更新日:2025年11月19日

商品開発の大幅なスピードアップを主眼にIT変革に2020年から取り組んできた第一フロンティア生命保険株式会社(以下、第一フロンティア生命保険)。同社では、基幹の契約管理システムのIT基盤更改にあたり、データベース(DB)サーバ環境を支えるインフラとしてIBMの高信頼性サーバ「IBM Power」とフラッシュストレージ「IBM Storage FlashSystem」(以後、FlashSystemと記述)を選択。Microsoft Azure上に展開したシステムとの間でハイブリッドクラウドの環境を構築しました。これにより、契約管理システムの可用性とスケーラビリティ、運用管理性、そしてコストパフォーマンスを大きく向上させています。

【課題】
・商品開発のスピードアップ、生産性向上のためにシステムのクラウド移行を推し進める必要があった
・基幹システムのデータベースサーバやストレージをクラウドへ設置することには可用性、コストパフォーマンスの面で難があった

【ソリューション】
・契約管理システムの基盤として高信頼AIXサーバ「IBM Power」とフラッシュストレージの「IBM Storage FlashSystem」を採用
・契約管理システムの基盤をEquinixのデータセンターに配備。Microsoft Azureとの間でハイブリッド構成をとった

【導入効果】
・契約管理システムの基盤について十分な可用性とスケーラビリティ、処理性能が確保できた
・契約管理システムをすべてクラウドに移行させた場合に比べ、数億円規模のコストメリットの創出が可能に

1. IBM Power&FlashSystem導入前の課題
 商品開発スピード業界ナンバーワンを目指しIT基盤を変革

第一生命グループの一員として2007年8月に開業(設立は2006年12月1日)した第一フロンティア生命保険は、個人年金保険や終身保険といった貯蓄性保険商品の提供に特化した企業です。開業以来、保有契約件数は順調に増加しており、2022年度末で168万件に達しています。また、2022年度の保険料等収入は過去最高の2兆6,126億円に達しています。

こうした業績の拡大を支えるべく、同社では2020年度からの3カ年計画でITインフラの変革を柱とするプロジェクト「DxF2022」を始動させました。その最大の目的は商品販売に要するシステム開発期間を従来の6~7か月から3カ月へと短縮し、業界トップのスピード開発を実現することです。同プロジェクトを指揮した第一フロンティア生命ITデジタル推進部長の中西 哲也氏は、次のような説明を加えます。

「当社のビジネスモデルは、銀行や証券会社・生保代理店などを通じて、貯蓄性保険商品をお客さまにお届けするというものです。そのモデルの中で業績がハイペースで拡大し、発売商品数が増えていくに従って、基幹の契約管理システムが大規模化し、かつ関連する周辺システム数も増えていきました。結果として、新商品用のシステムを開発する際に改定しなければならない対象と開発費用・期間が大きく膨らんでいました。DxF2022は、その課題の抜本解決に向けて打ち出した計画であり、戦略です」

DxF2022は、システムを可能な限りクラウドプラットフォーム(主に「Microsoft Azure」)に移行させ、それと並行してアジャイル開発体制の確立やシステム(アプリケーション)のマイクロサービス化などを推し進めるというものです。

そのプロジェクトを進める中で、同社が契約管理システムのデータベース「Oracle Database」を運用する基盤として選択したのがIBMのPOWER(POWER 9)プロセッサを搭載した「IBM Power」であり、フラッシュストレージの「IBM Storage FlashSystem」です。

2. IBM Power&FlashSystem採用の経緯
 高い可用性とコストパフォーマンスが選定の決め手に

第一フロンティア生命保険では当初、契約管理システムについてDBサーバとストレージを含むすべてをクラウドに移行させることを検討しました。ただし、DBサーバやストレージをクラウドに移行させ運用するよりも、IBM PowerとFlashSystemで構成されたオンプレミスの基盤でOracle Databaseを運用したほうが、システムの可用性が高まり、かつ運用コストが低くなることがわかり、後者を選択したといいます。

IBM Powerは創業以降より、FlashSystemは契約管理システムの基盤として2017年から使用していました。ですので、両システムの信頼性、可用性、処理性能の高さはよく知っていました。実際、IBM Powerの信頼性、可用性、そしてCPUコアの性能はIAサーバよりもはるかに上です。そのため、IBM Powerには、コア単位の課金体系を持つOracle Databaseのライセンス料(ランニングコスト)をクラウド上のIAサーバを使う場合よりも相当低く抑えられるメリットもあったのです」(中西氏)

もちろん、同社には、契約管理システムのDBをOracle Databaseから他に切り替えるという選択肢もありました。「ただし、それを行うとアプリケーションの大幅な改修が必要になり、相当のコストがかかります。ですので、DxF2022においては、Oracle Databaseを継続して使い、従来からのアプリケーションをそのままMicrosoft Azureにリフト&シフトさせることとしたわけです」と、第一フロンティア生命保険ITデジタル推進部の桂田 聖吾氏は振り返ります。

加えて、IBM Powerには急激なトランザクション増が発生した際に即時のリソース増強を可能とする「Capacity on Demand」機能が実装されているほか、物理アダプタを複数の論理区画(LPAR)で共有し、効率的に活用するための「Virtual I/O Server(VIOS)」の仕組みや環境複製を自動化して運用負荷を低減する「IBM PowerVC」の仕組みも備わっています。こうした機能により、IBM Powerは、クラウド上のITリソースと変わらないスケーラビリティや運用管理性を実現すると共に、FlashSystemのコストパフォーマンスも非常に高いと第一生命情報システム 保険システムソリューション部テクニカルリーダーの平野 将己氏は指摘します。

「今回選定したIBM FlashSystem 7200はミッドレンジモデルですが、レイテンシーが70μ秒で限界性能が230万IOPSと、以前使用していたハイエンドモデル(IBM FlashSystem V9000)の性能(レイテンシー200μ秒/限界性能52万6,000 IOPS)を上回っていました。また、データの読み書きの性能が他社製品よりも圧倒的に高く、迷いなく採用が決められました」(平野氏)

さらに、IBM FlashSystem 7200には容量をモジュール単位で増やしていける柔軟な拡張性やストレージのパフォーマンスに影響を与えないインラインのデータ圧縮機能なども備わっており、それらの点も評価されました。

3. IBM Power&FlashSystemの導入効果
 AITによる支援で更改がスムーズに進展し
 数億円規模のコストセーブに成功

IBM PowerとFlashSystemの導入を決めた第一フロンティア生命保険は、それらの設置場所としてMicrosoft Azureと親和性が高く、日本国内に複数のデータセンターを配備しているEquinix社のデータセンターを選択。東日本と西日本にあるEquinix社データセンターへIBM PowerとFlashSystemを配備し、それぞれのデータセンター内では、機器を冗長化し、両現用として稼働させることで信頼性とキャパシティを確保しました。また広域災害に備え、契約管理システムのDBサーバとストレージをホット/スタンバイ方式で冗長化し、そのうえMicrosoft Azureに配置したシステムと接続させました。

こうした契約管理システム(のDBインフラ)のインテグレーションを担ったのはAITです。その働きについて平野氏は次のように評価します。「AIT様にはシステムインテグレーションの全般を担ってもらいましたが、IBM社など関係各社と密接に連携しながら、すべてを滞りなく遂行していただきました。AIT様のおかげで、契約管理システムのインフラ構築が期日どおりに、高い品質で完了できたと感じています」

この言葉を受けたかたちで、中西氏も「今回のDxF2022では多岐にわたるシステムを新基盤へ移行しましたが、契約管理システムのインフラ構築(更改)はきわめて順調でトラブルらしいトラブルは一切なかったと言い切れます。AIT様には本当に感謝しています」とする。

新しくなった契約管理システムは2023年1月に本番稼働がスタートし、稼働後もトラブルはなく、Microsoft AzureからのDBサーバの利用もパフォーマンスよく行われていると、桂田氏は言う。

そして中西氏は、契約管理システムの今後についてこう展望します。

「契約管理システムの基盤としてIBM PowerとFlashSystemを選択したことで、システムのすべてをクラウド化した場合に比べて、向こう数年で数億円規模のコストメリットが得られる可能性があると見ています。そして将来的にもIBM Powerは進化を続けるでしょう。すでにIBM Power Virtual Serverというクラウドサービスも提供されていますが、そうしたソリューションやデジタル技術の進化を見据えながら、システムのIT基盤について、より広範で適切な選択肢をこれからも検討していきます」

※掲載内容は、取材当時のものです。

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