インフラ導入事例

仮想化技術によるIT共通基盤構築事例:金融

仮想化基盤と統合バックアップ環境構築によるTCO削減

共通ポリシーに基づくIT基盤による、既存システムの移行コスト削減

最終更新日:2025年11月20日

2013年に始まったプロジェクトは、業務システムごとに導入されたハイスペックの物理サーバを集約し、サーバ資源の無駄を排除することと、セキュリティなどを含めた共通の設計思想に基づく共通のIT基盤を構築し、TCOを削減することが目的でした。

導入前の課題
・必要以上のスペックの物理サーバの台数とライセンス費用の増大。
・サーバごとに異なる設計ポリシー。
・システムごとに異なるバックアップ環境。

ソリューション
・仮想化基盤構築による物理サーバの集約。
・共通設計思想に基づく共通基盤の構築と既存システムの移行。
・統合バックアップと統合監視環境の構築。

導入効果
・200台あった物理サーバ台数の大幅削減(現在、移行中)。
・サーバのコア数を集約して設置スペースとライセンス費用を大幅に削減。
・標準テンプレート、セキュリティを含む共通ポリシーの定着。
・統合バックアップシステムによる短時間で確実なバックアップ。

1. 業務システムごとに導入された物理サーバの乱立

従来は、業務システムごとにサーバを導入していました。サーバは最低でも2コアなど、業務システムが求めるスペックをはるかに上回るものが導入され、その結果、物理サーバの台数が急増して設置スペースに余裕が無くなっただけでなく、物理サーバの能力が余るといった、IT資源の無駄が増えていました。

サーバの集約と仮想化によって、システム資源の無駄を排除し、ライセンスコスト、調達コスト、システム運用・移行コストの削減を実現することが、プロジェクトの重要課題でした。

2. 仮想化基盤の構築とP2V移行の段階的な実施

最初に着手したのは、物理サーバで稼働しているシステムを仮想サーバへ移行する、Physical to Virtual(P2V)方式の移行でした。移行対象は、情報系システムのIAサーバでした。移行前のお客様サーバ環境のCPU使用量を調査し、必要コア数を定義してアサインしたため、過剰割り当てによるリソースの無駄がなくなり、サーバ統合の大きな効果がありました。また、仮想化により、CPUやメモリのリソースの追加が容易になったので、ピーク時の対策も容易になりました。

お客様のシステム移行は年度計画にて、P2Vや仮想でのシステム再構築を実施しています。年度の必要リソースに応じて、物理リソースを追加して、効率的な資源拡張を実施しています。

昨年度、追加構築したAIX共通基盤システムでは、システムに対するお客様の信頼性が高く、長期間使用されているシステムです。IA系サーバよりもさらに可用性と耐障害性が充実しています。PowerHA SystemMirrorを利用して、IBM Power Systemsならではの高可用性クラスターを実現しています。クラスター構成にすることで単一障害点を除去し、システム装置/ネットワーク/ディスク/アプリケーションの状態を監視します。障害を検知すると、ローカルまたはリモートの代替機器へ引き継ぎを自動で行い、サービスを継続するので信頼性をより一層高めています。

さらに、AIX共通基盤システムでは、IBM Power SystemsのHWで実装されている仮想化技術のVirtual I/O Server(VIOS)による専用LPAR機能も利用しています。これは、ディスクI/Oや通信に必要な物理アダプタを複数の論理区画(LPAR)から共有して使用することを可能にする機能で、当機能の活用により、帯域を効率よく利用できます。そのため、少ない物理アダプタでのサーバ統合を可能にします。そのうえ、サーバ(LPAR)を追加する際にも新規に物理アダプタを購入する必要が無く、既存の物理アダプタを利用して即座に必要なサーバの追加を実現しています。

3. 統合バックアップ環境の構築

業務システムごとにサーバを導入した結果に生じた問題はIT資源の無駄だけではありませんでした。システムごとにバックアップの方式が異なりました。そこで、サーバの仮想化と集約に留まらず、統合バックアップにも挑戦しました。

統合バックアップ環境では、テープ装置に直接バックアップするのではなく、すべてのデータをディスク装置にコピー(D2D)してから、ディス上に割り当てた領域が一定値を超えたときに、すべてのデータをテープ装置にバックアップする仕組みにしました。Windows用の統合バックアップサーバと、UNIX(AIX)、Linux(RHEL)の統合バックアップサーバを構築しています。どちらもD2D2Tです。

Windows用統合バックアップサーバには、Arcserveを採用し、テープ装置を使って災害対策用にデータを保管しています。UNIX、Linux用統合バックアップサーバには、IBM Spectrum Protect (旧称: Tivoli Storage Manager)を採用し、テープ装置を使って災害対策用にデータを保管しています。

さらに、重要データを保管するストレージなど、バックアップの要件レベルに合わせてストレージの領域を選択しました。RAID構成についても5,6など細かく設定し、データを複数のディスク装置に分散することで、性能と耐障害性を同時に高めています。

4. 共通設計思想に基づく『共通基盤』の構築

今回のプロジェクトでは、単にサーバを仮想化し集約するだけでなく、セキュリティなどを含めた企業ポリシーを反映した7種類の標準テンプレートの作成など、共通の設計思想に基づくIT基盤を構築しました。

AITは、共通テンプレートを含む、IT共通基盤の利用ガイドや既存システムの移行ガイドの作成をお手伝いしました。システムの重要度やデータ量のヒヤリング、機器構成のグループ決めなど、ハードウェアの知識だけでなく、業務システムの内容やパフォーマンスまで意識する必要がありました。また、業務システムによって使用するテンプレートの定義、バックアップの種類や選択、バックアップデータの世代管理など細かな点がガイドにまとめられています。

AITならではのきめ細かなサポートによって、仮想化、統合バックアップ環境、共通思想や企業ポリシーに基づくIT共通基盤が、着実にTCO削減効果を出しています。今後も、AITは、先進的な機能を活用した高品質のシステムを提供し、安全・安心の運用の実現しながら、TCOの削減をご支援します。

5. 仮想化と共通基盤構築の成果

プロジェクトは2018年まで継続しますので、現時点ですべての成果がまとまっているわけではありませんが、下記のようなコストの削減が着実に実現されていると考えられます。

・ライセンスコスト
・調達コスト
・運用コスト
・移行コスト

※掲載内容は、取材当時のものです。

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