お客様指向の営業活動支援のためにIBM SPSSを採用
成約率の向上、データ分析作業の効率化、さらにコスト削減を実現
明治21年3月1日に創業し、2018年3月には創立130周年を迎える朝日生命保険相互会社(以下、朝日生命)。 “まごころの奉仕” を経営の基本理念として、常にお客様に向き合った充実した保険商品を提供し、業界初となるGoodデザイン賞を受賞した「あんしん介護」(2013年)に代表されるようなシニア向けの介護保険をはじめ、女性や中堅企業の経営者をターゲットにしたサービスを中心にビジネスを展開しています。
データウェアハウスやCRMなどの情報系システム構築に早くから取り組んできた同社では、これらの蓄積データを活用し、営業活動支援を目的にした「データ分析プロジェクト」において、IBM SPSS(以下、SPSS)を採用することで、成約率の向上とデータ分析作業の効率化、さらにコスト削減など、大きな導入効果をあげました。
SPSS導入前の課題:既存の蓄積データを最大限に活かして営業活動を支援する
生命保険事業を通じて、個人および法人・団体のお客様に “ご安心” を提供する朝日生命。現在は、特にシニア世代、女性、中堅企業経営者という3つのお客様に注力したビジネスを展開しています。 “まごころの奉仕”という基本理念に則ったお客様対応の実現に向けて、クオリティNo1の営業職員体制の創造を掲げる同社では、早期からデータ活用のための基盤整備に取り組んできました。
同社におけるデータ活用について、朝日生命 営業企画部の島田氏は、「データ活用のための基盤整備については、比較的早い時期から取り組みを行っており、平成13年にはDWH(データウェアハウス)を、また平成24年にACTIONと呼ぶCRMシステムを構築しました。」と話します。これらのシステム構築の背景には、世帯を含めたお客様情報や朝日生命とお客様との接点データ、コールセンター、営業、Webサイトのすべてを統合するという方針があり、その目的は、ACTIONシステムに蓄積されたすべてのデータを利活用して営業効率を最大化するというものでした。
数年前に開始されたのが「データ分析プロジェクト」でした。期間を限定して試験導入した分析システムで、自社でデータを分析する体制の構築と、成果が出る分析作業が実現できるかどうかを確かめました。一定の成果は得られましたが、かかる導入・運用コストをカバーできるだけの成果を得ることは難しいと判断し、プロジェクトを仕切り直す状況となりました。しかし、分析の担当者は、コスト面での課題をクリアすれば、自社でデータ分析をする体制は構築できるという感触を得ていました。そこで同社では、これまでに蓄積した自社の分析力を活かすことが可能な、新たな分析製品を探し始めました。
このような中、AITが主催するSPSSのセミナーの存在を知った同社では、2名の担当者をこのセミナーに参加させ、当時導入していた他社製品の使用感や実現できる機能との比較を行いました。この結果、様々な点でその優位性が明らかになったため、同社は「データ分析プロジェクト」の仕切り直しという形で、SPSSによる実証試験の実施を決定しました。
SPSS採用の経緯:標準で提供される重要機能や開発言語が不要な点を評価しSPSSの採用を決定
SPSSに関して大きな優位性と位置付けられたのは、「変数選択機能」の存在でした。島田氏は、「以前、試験導入した他社製品では、この機能が提供されておらず、変数選択にあたっては外部コンサルティング会社が開発したツールを使ってはじめて実現できるという状況でした。分析対象のデータを、実際に分析するためには、データ形式を変換する手間もかかります。しかも、分析システム固有の言語によるプログラミングが必要でした。SPSSの場合はプログラミングではなく、GUIから設定できることに大きな優位性と感じました。さらに、最適なしきい値でクラス分けをするための機能も標準で用意されていました。弊社が対象とするデータでは600〜700のしきい値を設定する必要があり、手作業での対応は実質不可能でした。」と強調します。
また、朝日生命 営業企画部の神谷氏は画面表示の言語に触れ、「他社のシステムでは英語しか使用できませんが、SPSSの場合には日本語ですべて対応することができます。これは使用者側の利便性という面で非常に大きなメリットと感じました。」と話します。
SPSSの評価実施を決定した同社では、他社製品とSPSSの2製品を使ってPoC(概念実証試験)を実施。この結果について島田氏は、「他社製品の場合、製品独自の仕様に合わせたデータのフォーマット変換が必要であり、そのために用意されていた特殊な開発言語は、社員にとってハードルの高いものでした。一方、SPSSの場合には、EXCELやTEXTファイルなど、通常私達が使っているデータフォーマットそのままで入力でき、開発言語によるコーディング等も不要で、分析までの事前準備にかかる時間や負荷が大幅に節約できました。」と話します。実証実験の過程を通じてSPSSの優位性を評価した同社は実業務における運用を開始しました。
SPSS導入効果:分析結果を活用した営業活動で顕著な効果を発揮。運用面でも効率化、コスト削減を実現
SPSSの導入効果は2つの面で明確に現れました。
1つは実際に今回の分析の仕組みを使って営業活動の業績が向上したという効果。そしてもう1つは運用面で、今回の取り組み実施にあたっての作業負荷や時間、さらにコストが以前より削減されたという効果です。
営業活動における効果について島田氏は、「あんしん介護のクロスセルにおいて、対象となるお客様を半分に分け、片方を担当する営業には単純な顧客リストを、もう片方を担当する営業には、行動履歴と属性情報の分析結果から、“ご加入意向の高い”お客様を示す分析マークが付けられたリストを渡し営業活動を行ってもらいました。分析に必要なデータは、ACTIONシステムに蓄積されたデータを使いました。そして、それぞれの上位10%を比較した結果、見込みの高いお客様のリストを持って積極的な活動を行った営業グループの方が、もう一方のグループより明らかに高い成果をあげました。この差は非常に顕著に現れ、分析リスト使用により向上したと考えられる成約件数分を金額換算すると、前年度までを含めた本プロジェクトの総投資金額を上回ることが分かりました。また、営業にとって、SPSSの決定木( ディシジョンツリー)分析は非常に分かり易く、新たな気付きを与えられ、データ分析の結果にも納得できると、高く評価されています。」と話します。これは今回プロジェクトを再試行するにあたって想定した期待効果を十分満たすものでした。
一方、プロジェクト運用における負荷、時間、コスト面でも大きな導入効果が現れました。
「プロジェクトのスケジュールが非常にタイトだったため、以前実施したロジスティック回帰分析のためのデータが用意できず、急遽、決定木分析に変更するなどの対応が必要になりましたが、SPSSの場合には、開発言語を含め外部のコンサルタント等への依頼作業が発生せず、直観的な操作や日本語化されたUIなどによって、自分たちで迅速かつ的確な対応が行えたことも大きな導入効果だと考えています。」(神谷氏)。
今回のプロジェクトの成功は、単独の施策における導入効果に留まらず、同社が期待してきた、過去のIT投資(DWHやCRM)の最大限の活用と言う意味でも、大きなメリットをもたらすものでした。
今後の展望:定期的に実施するすべての施策、そして他の分野にも横展開を計画
期待に応える導入効果が得られた今回のプロジェクトですが、朝日生命では既にSPSSによる「見込み客リスト」の活用施策の適用範囲拡大を検討し始めています。「これまではスポットでの試験導入という位置付けでしたが、今後は年間を通じて定期的に実施する施策すべてに対して、SPSSによるデータ分析を適用していくことを計画しています。IBM社、AIT社の支援を仰ぎながらその都度モデルを作成していき、ターゲットを少しずつ変える形で横展開を図っていきたいと考えています。」(島田氏)。
また同社では、社内における施策の横展開として、営業・マーケティング以外の分野、たとえばアンダーライティングや新商品開発についても、データ分析を活用していくことを検討しています。AIや機械学習についても社内から業務適用の要望があがってきている状況ですが、SPSSの場合には、機械学習のモデルも充実しているため、将来的なこれらの「自動立案」という新たな用途にも応えることが可能であり、その活用範囲は今後さらに拡大していくことが予想されています。
最後に島田氏は、今回のプロジェクトを成功に導く一因となったAITの貢献について言及し、プロジェクトでの苦労を含めて次のように締め括りました。「実は最初の分析の社内説明会では営業を統括する部署のメンバーの納得感を得られませんでした。そのため当初作成したモデルの作り直しが発生した際には、複数名の担当をアサイン頂き、年末年始も含め、モデル再作成の対応を行っていただきました。また、社内への分析結果の納得感を得るためには、自社メンバーによる分析が不可欠であることも改めて説明いただきそのためのサポートもいただきました。今回のプロジェクトで大きな成果をあげられた背景には、これまでには考えられなかったサービス内容で分析システムを構築支援したAIT社の大きな貢献があったと実感し、深く感謝しています。」
常にお客様に向き合ったサービスと保険商品を提供し続ける朝日生命。お客様ごとに最適なアクションを考える営業一人ひとりの活動を支え、お客様満足度を高める分析基盤のコアとして、SPSSは、日々最大限に活用されています。
※2017年10月取材
実績企業プロフィール
朝日生命保険相互会社様
所在地 | 〒100-8103 東京都千代田区大手町2-6-1朝日生命大手町ビル |
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事業概要 | 生命保険事業を通じて、個人および法人・団体のお客様に “ご安心” を提供する朝日生命。現在は、特にシニア世代、女性、中堅企業経営者という3つのお客様に注力したビジネスを展開している。 |