「au Online Shop」の 顧客獲得最大化を目的にIBM SPSSを導入 レコメンドシステムを構築し、コンバージョン率向上を実現
KDDI株式会社は、同社が運営するau公式通販サイト「au Online Shop」の顧客獲得を最大化するために、IBMの統計解析ソフトウェア「IBM SPSS Modeler」(以下、SPSS Modeler)によるデータ分析基盤を構築しました。
SPSSに関する豊富なソリューション提供実績をもつAITをパートナーに選定。AITの技術支援を受けながら基盤の構築を進め、顧客ニーズに最適な商品をサイト上で提案するレコメンドシステムを完成させました。このシステムによりau Online Shopのコンバージョン率は確実に向上し、顧客獲得に大きな効果が得られています。
SPSS導入前の課題:顧客獲得最大化を目的にデータ分析・活用の取り組みに着手
日本を代表する大手通信事業者のKDDIは、同社が運営するモバイル通信サービス「au」の関連製品を取り扱う公式通販サイト「au Online Shop」を運営しています。スマートフォンや携帯電話、タブレットなどのモバイルデバイスをはじめ、各種オプション品やアクセサリーなどのモバイル関連製品、および各種デジタルコードを幅広く取り扱っており、24時間365日いつでも待ち時間なしに オンラインで注文・購入できるサイトとして、主に機種変更を希望する既存のauユーザー、他社から乗り換える新規ユーザーに利用されています。 10年以上にわたって運営を続けているau Online Shopですが、近年はユーザーがより利用しやすいサイトを目指したさまざまな施策に取り組んでいます。そうした施策の一つとして2015年頃から検討を開始したのが、サイトに訪問するユーザーのデータを分析・活用する取り組みでした。 「au Online Shopではこれまでも、サイト訪問者のデータを収集・蓄積していましたが、それを顧客データとしてしっかりと管理することができていない状態でした。この課題を解決してサイトの顧客獲得を最大化するにはデータ分析・活用の仕組みが必要だと考え、まずはサイトに訪問したユーザーにお勧めの機種を提案するレコメンドシステムを構築しようと検討を開始しました」(中山氏) これを受け、au Online Shopの運営企画を担当していたチームでは、レコメンドシステムに最適なデータ分析ソリューションを探すことにしました。 「データ分析は、何の経験も知見もない私たちの部署のスタッフが行わなければなりません。そこで最初に、プログラミングが不要でGUIのアイコンベースで使える複数のソリューションを導入候補としました。さらにスモールスタートで始められること、分析結果をリアルタイムに活用できることなどの要件でソリューションを絞り込んでいきました。その結果、有力な導入候補として挙がったのが SPSS Modelerでした」(相馬氏) 分析に必要なインフラに関しては、IT部門との協議が続きました。IT部門でも社内のオンプレミスのシステムを維持管理することに限界を感じていたのです。セキュリティやネットワーク負荷などを総合的に検討し、クラウド化を選択しました。既に導入されていた分析用ソフトウェアは、IBM SPSS(以下、SPSS)でした。クライアントソフトでは能力不足であったため、サーバーソフトに置き換えることを考えました。そこで、SPSSサーバーの稼動実績があり、データ分析のサービスが豊富であるという条件を満たすクラウドサービスを探し始めたところ、AWSが希望する条件にぴったり当てはまりました。2018年の9月までにシステム構想を練り、社内調整後の12月に基本計画を立案し、2019年8月にシステムを構築、9月から試験運用、10月にデータ分析システムは本稼働しました。
SPSS採用の経緯:SPSSソリューションの提供実績が豊富なAITをパートナーに選定
SPSS Modelerを有力な導入候補に挙げたKDDIでは、さっそくSPSS Modelerの開発・販売元である日本IBMに相談しました。そこで紹介されたのがAITでした。 「小規模なトライアルからリーズナブルに始めたいという要望を日本IBMに伝えたところ、2016年10月に開催された『IBM World of Watson 2016』の会場内で紹介されたのがAITでした。AITは国内の各業種業界を代表する大手企業にSPSSソリューションを提供してきた豊富な実績を有しており、コスト面でも予算の範囲内に収まります。これらが決め手となり、AITをパートナーに選定して同社の 支援を受けながらSPSS Modelerを導入することに決めました」(相馬氏) 2017年1月、まずはSPSS Modelerのクライアント版をトライアル導入し、スモールスタートでデータ分析の効果を測定するPoC(概念実証)を3月まで実施しました。さらに7月には過去の繁忙期のデータを抽出し、ユーザー特性と合わせて分析。分析結果からユーザーにお勧めする商品が購入に至るかどうかという検証を実施しました。 「データ分析結果を基にお勧めの商品をサイトのバナーに表示するようにし、4~5カ月にわたって検証を行いました。その結果、仮説どおりの効果が得られることが確認できたため、本番運用に向けた導入作業を進めることにしました」(相馬氏)
SPSS導入効果:コンバージョン率向上など投資に見合った効果があり、顧客獲得増に寄与
au Online Shopのリアルタイムレコメンドシステムが完成したのは2019年5月のことです。翌6月に本番環境をリリースしました。 「レコメンドシステムは当初、SMSの機能強化版である『+メッセージ』を利用してピンポイントで商品を提案するワンツーワン(1to1)マーケティングを目指しました。しかし+メッセージの利用者が当初想定以上に鈍化してしまっていたこともあり、現在はau Online Shopのサイトにアクセスしたモバイルデバイスの端末情報を取得し、機種ごとにレコメンドするシステムに移行しています。」(相馬氏) このレコメンドシステムは、Androidスマートフォンのユーザーを対象に、2020年6月にリリースしました。新しいレコメンドシステムでは、au Online Shopのサイト上に表示するお勧め商品のリスト生成・更新も自動化されており、レコメンドシステムがより効率的に運用できるようになりました。
今後の展望:ライフデザイン商材など適用の幅を広げていく計画
今回、SPSSソリューションの採用によって実現したデータ分析基盤とレコメンドシステムは、au Online Shopだけにとどまらず適用の幅を広げていく予定です。 「2020年3月からは、ライフデザイン商材のレコメンドシステムとしても運用を開始するなど、少しずつ他のビジネスへの適用も始まっています。今後はauホームページとの一体化を進め、適用範囲の拡大を検討する予定にしています」(中山氏) また、事情により提供を中止したワンツーワンのレコメンドシステムについても、別の方法で実現できないか検討を重ねています。 「SPSSによるデータ分析基盤の構築に取り組んでから3年以上が経過し、私たちのビジネスも当初とは状況が変わりつつあります。AITには導入当初から手厚い 技術支援の提供を続けていただきましたが、今後もベンダーニュートラルな立場からさまざまな新技術の提案、的確なサポートを期待しています」(中山氏)
※2021年3月取材
実績企業プロフィール
KDDI株式会社様
創業 | 1984年(昭和59年)6月 |
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資本金 | 1,418億5,200万円(2018年12月末現在) |
従業員 | 4万4,952人(連結) |
所在地 | 〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3-10-10 ガーデンエアタワー |