クラウド導入事例

Wasabi Hot Cloud Storage導入事例:医療法人 錦秀会様

5病院のBCP強化にホットクラウドストレージ「Wasabi」を活用

厚労省・医療情報システム安全管理ガイドラインへの対応を実現

最終更新日:2025年11月20日

錦秀会は、錦秀会グループの中核として大阪市南部と堺市を中心に5病院2施設を運営する医療法人だ。同法人では、AITによる支援のもと、2023年5月に発布された厚生労働省のガイドライン「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」への対応策としてホットクラウドストレージ「Wasabi」を導入。電子カルテシステムや医事システムのデータバックアップに有効活用している。

課題
・医療情報システムに関する厚生労働省の安全管理ガイドラインが改定され、大規模災害を想定したBCP 対策の強化が必要になった
・錦秀会が運営する病院の電子カルテシステムや医事システムのBCP対策には関西での大規模災害時にデータが失われるリスクがあった

ソリューション
運営する全病院の電子カルテシステム、ならびに医事システムのバックアップデータの保管先としてホットクラウドストレージの「Wasabi」を採用。大規模災害に強いデータ保管の仕組みと体制を確立

1. Wasabi導入前の課題
 厚労省・安全管理ガイドラインの改定でIT-BCP対策の強化が急務に

錦秀会は、「やさしく“生命(いのち)”をまもる」という理念のもと医療、介護、教育の複合機関として地域住民の健康を支える医療法人だ。西日本最大級の医療法人である錦秀会グループの中核組織として、大阪市南部と堺市を中心に5病院2施設を展開。総病床数は3,206床に上る。2022年6月には、住吉区の4病院を1棟2病院に統合し、阪和病院・阪和記念病院を新築移転して開院。これらの病院では救急医療・専門医療・急性期医療・亜急性期医療・慢性期医療のあらゆる機能を提供している。

そうした錦秀会にとって、運営する各病院の医療情報システムを災害やサイバー攻撃の脅威から守り、業務を継続させることは大きな使命の1つだ。そのため同法人では、運営する5病院の電子カルテシステムや医事システムについて、そのデータの保全性を確保する目的で大阪市と堺市にある2つの主要病院にバックアップデータを持たせるという方式を採用していた。

「この方式によってデータの保全性は一定のレベルまで高められると言えます。ただし、関西地域で大規模災害が発生した場合、大阪市と堺市の病院が同時に被災してしまい、すべてのデータが失われてしまうリスクが否定できませんでした。」と、錦秀会 医事管理部 医事管理課 情報システム課の部長である花坂 仁啓氏は明かす。

そうした中で、厚生労働省が定める医療情報システムの安全管理ガイドラインが改定され、その改定版(第6版)が2023年5月に発布されることになった。これにより、錦秀会も大規模災害を想定したデータ保全対策の強化が急務になったと、錦秀会IT パートナーであるアスクラピウスのソリューション事業部 アソシエイト、村尾 大治氏は指摘する。

「改定された安全管理ガイドラインは、医療機関に対してランサムウェアなどのサイバー攻撃や大規模災害への対策強化を強く求めています。一方で、錦秀会の電子カルテシステムや医事システムは、花坂さんが指摘したとおり、遠隔地へのデータ保管に関する対策が不十分で、大規模災害により業務の継続に必要なデータがすべて失われるリスクがありました。そこで、大規模災害に強いデータ管理体制の構築を目指し、ITのBCP(事業継続計画)を見直すことにしました。」(村尾氏)

2. Wasabi導入の経緯
 圧倒的なコストパフォーマンスを評価し
 Wasabiをバックアップストレージに採用

IT-BCPの見直しを進める中で錦秀会が採用を決めたソリューションが、ホットクラウドストレージの「Wasabi」に電子カルテシステムや医事システムのデータをバックアップすることだ。

「Wasabiの存在は、阪和病院・阪和記念病院のIT基盤構築を支援してくれたAITの紹介で知りました。このサービスを使えば、必要最小限の手間とコストで『遠隔地へのデータの保管』という要件をクリアーし、IT-BCPが強化できると判断しました」と村尾氏は言う。

Wasabiと同様の機能を提供するクラウドストレージは他にもある。その中でWasabiを選んだ最大の理由として、村尾氏は圧倒的なコストパフォーマンスの良さを挙げる。

「錦秀会の電子カルテシステムや医事システムのデータは大量で、バックアップデータの容量は約40テラバイト(TB)に上ります。そのため大容量データの保管に対応でき、かつストレージの使用料金が安価であることが製品選びの重要なポイントになりました。その点でWasabiの場合、他のクラウド製品よりもストレージ費用が安価で、保管するデータ容量が大きくなればなるほどその差が顕著になり、費用が他のクラウド製品の半分以下になります。しかも、Wasabiの料金体系はシンプル(固定的)でダウンロードやAPI リクエストによる追加費用も発生しません。ゆえに予算が立てやすく、その点も高く評価しました。」(村尾氏)

加えて「オブジェクトロック機能の搭載」や「管理画面の使いやすさ」、さらには「ホットストレージ」であるがゆえのパフォーマンスの高さもWasabiを選ぶ要因になったという。

「Wasabiはデータを削除や上書きから確実に保護するオブジェクトロック機能を搭載しているため、オフラインバックアップとしても活用でき、容易にランサムウェア対策することができます。また、管理画面のユーザーインタフェース(管理UI)がシンプルで扱いやすい点も気に入りました。さらに言えば、Wasabiはホットストレージであるのでデータの出し入れのパフォーマンスが高く、アーカイブ用途だけではなくファイルサーバとしても使える点も魅力的でした。」(村尾氏)

3. Wasabi導入の効果
 AITの支援により導入作業も淀みなく完了
 低コストでガイドラインに則ったデータ保護を実現

Wasabiの活用を決めた錦秀会では2023年3月から導入プロジェクトを始動。病院とWasabiとを接続したのち、Wasabiのトライアルアカウントを活用して「30日間・1TB制限」内で全体の基本設定と単体試験を行った。また2024年4月から有償アカウントに切り替えてリストア検証と初回のフルバックアップを実施。2024年6月にはバックアップ(増分バックアップ)のスケジュール調整と実装を終え、本番運用へとつなげている。

「初回のフルバックアップ時には、オンプレミス環境にある大量のデータをWasabiにアップロードしなければならず、ネットワーク帯域幅を加味したアップロードスケジュールの検討・調整に多少手間取りました。ただ、データの細分化や絞り込みなど、AITが要所要所でこちらの要望を考慮したサポートを提供してくれたおかげで、導入プロジェクト全体は計画通りに淀みなく進行しました。AITの技術力の高さを実感しています。」(村尾氏)

Wasabiの本番運用後、同ストレージへの増分バックアップはスケジュール通りに何の問題もなく行われている。その点を踏まえつつ、花坂氏はWasabiの導入効果を次のように評価する。

「管理UIが分かりやすいクラウドサービスのWasabiによってデータバックアップの運用に要する手間とコストは確実に下がっています。さらに重要なのはWasabiとAITのサポートのおかげで、厚労省のガイドラインに則ったIT-BCPの対策強化が低コストで、かつ素早く実現できたことです。この成果は、限られたITリソースの中で患者の方々の大切なデータをしっかりと守らなければならない我々にとって、Wasabi導入の最大の効果であり、意義であると感じています。」

この言葉を受けたかたちで、村尾氏はWasabi導入の効果についてこう述べる。

「IT-BCPの整備・強化は、医療機関の信頼性を高め、ひいては患者の方々の健康や生命を守ることにつながる大切な取り組みです。だからこそ、厚労省がガイドラインを通じてセキュリティ対策の強化やIT-BCP対策の強化を医療機関に強く訴えかけているわけです。ですので、日本のすべての医療機関は、そのガイドラインに則ったIT-BCP対策を検討・構築することが必要ですし、そのミッションを遂行するうえでWasabiがとても有用であることが今回の導入を通じて確認できました。Wasabiを選んで正解だったと考えますし、他の医療機関の方々にも、Wasabiのようなツールを使い、IT-BCPの強化に乗り出していただきたいと願っています。」(村尾氏)

※掲載内容は、取材当時のものです。

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